肥後 棚底城

お城のデータ
所在地： 熊本県天草市倉岳町棚底字尾崎
遺　構： 曲輪、石垣、土塁、横堀、竪堀、堀切
形　式： 山城 築城者： 不明 築城年代： 不明


見　ど　こ　ろ
（ 六の曲輪北東部隅の石垣 ）
（ 六の曲輪南側の石垣 ）
（ 五の曲輪南側の石垣 ）
　棚底城は、倉岳から棚底湾に向けて派生した尾根の先端部を利用して築かれている。尾根先端部の南から東へと流れる棚底川が天然の堀となった要害の地形となっている。

　棚底城は、上津浦氏と栖本氏が繰り広げた棚底抗争の舞台となった。有明海に面した上津浦城を本城とする上津浦氏が、八代海に面した姫戸・龍ヶ岳を抑えて対岸の八代・芦北を制している相良氏と連携を保つ上で、棚倉城は陸路・海路の往来する交通の要であった。逆に、栖本氏にとって棚底城は、上津浦氏と相良氏の連携を遮断する戦略的にも重要な意味を持っていた。

　棚底城の縄張りは、尾根の最高所に主郭を置いて、東の尾根先端部に向けて大小7つの曲輪を直線的に並べた縄張りとなっている。六の曲輪から五の曲輪、三の曲輪には土留めの石積みの遺構が随所に見られ、天草の中世城郭でここまで多くの石積みの遺構が見られたことに少々驚いた。

　棚底城の特徴は石積みの多用以外に、主郭の背後には三重の横堀と土塁、一条の堀切、更に北斜面の竪堀群が上げられる。天草の中世城郭では背後の尾根を一条の堀切だけで遮断線を構築するのが一般的だが、棚底城のように横堀を重ねて遮断線を厳重にするのは、上津浦氏の城に見られる特徴であるようで、見応えのある遺構であった。


歴　　　　　史
（三の曲輪の石垣 ）
（ 三重の横堀と土塁 ）
（ 主郭背後の堀切 ）
　棚底城は、築城年代や築城者については定かでない。文献資料から築城時期を明確には出来ないが、発掘調査で南北朝時代から室町時代前期の遺物が出土している。

　室町時代後期になると、天草に割拠する領主は国人一揆として連帯して対外的な行動をとる領主連合的な特徴を持ち、文亀3年の相良長毎が八代奪回の戦いに際して、上津浦氏・栖本氏など天草八城主が水軍を出して相良氏に協力している。

　戦国時代、天文元年に上津浦治種と天草・志岐・栖本・大矢野・長嶋氏の五家連合とが合戦となり、孤立した上津浦氏は相良義滋の支援を受けている。以後、天草五人衆による天草での覇権争いが繰り返され、天草上島では上津浦氏と栖本氏とが対立するようになる。

　天文13年に上津浦氏の一族が居る棚底城を栖本城主栖本重秀に攻め取られた。天文20年に肥前有馬氏の支援を得た上津浦氏が栖本城を攻め、天文20年〜弘治3年までの間、棚底城を巡って上津浦氏と栖本氏が抗争を繰り返した。永禄3年、相良義陽の命により棚底城は栖本氏から上津浦重貞へ返還された。

　その後も上津浦氏と栖本氏の抗争は繰り返されたが、天正7年に天草五人衆は島津氏に降伏してその傘下に入る。棚底城はこれ以前に廃城となった可能性が高いと考えられている。


お城へのアクセス
鉄　道： 熊本桜町ＢＴ〜本渡ＢＴ〜バス／棚底
　車　： 九州道松橋ＩＣ〜国道266号線〜県道59号線
駐車場： なし（城石碑前に2台程度の駐車スペースあり）


ひとくち ＭＥＭＯ
天草上島の覇権を巡って争奪戦が行われたお城。

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